ベークライト

人類にとって最初のプラスチックはベークランド博士が発明をしたベークライトである。少し視点を変えてみる。プラスチックは高分子化合物。木材も高分子化合物。このように定義できる。微生物は木材を分解する能力がある。強風や雷に打たれた木材は山肌に倒れて微生物の働きにより土になる。

東京駅の松の木地盤

木材が水に浸っても破壊されてしまうまでにはかなりの時間を要する。熱海の温泉にはヒノキでできた浴槽がある。丸の内の駅舎の基礎には松の木でできた杭が撃ち込まれていたという。100年もの長い間朽ちることなく駅舎を支えた。

駅舎の下で100年近く駅を支えてきた松杭

プラスチックは自然界では分解されない。このことにより、現代人の生活が脅かされている。プラスチックは高分子化合物である。松の木も高分子化合物である。松の木には松脂がある。琥珀は樹液が化学変化してできたものである。200℃に加熱すると琥珀油になる。溶融したと認めたとすると熱可塑性のプラスチックと言えるのではないか。

松脂は松の木から出てくる樹液のこと。(バッターの松ヤニ利用はOK、一方投手はNGというのがメジャーでも日本でも共通のルールとなっています。)この松脂の色を見ていただきたい。なんと、ベークライトとよく似ているではないか。最初にベークライトをみた人が合成樹脂と命名したとしても不思議ではない。

松脂まつやに 袋入り

松脂まつやに 袋入り

村上電業製の布入りベークライトパイプ加工品

村上電業製の布入りベークライトパイプ加工品

投手が体やグラブ、ユニフォーム、ボールそのもの等に松ヤニを塗るのは禁止されています。

https://yakyupark.com/2019/05/01/pine/

フェノール樹脂の分子的な構造は3次元である。このことは高温で軟化や溶融しないことを意味し高温での使用が可能になる。

フェノール樹脂であるベークライトを燃焼させると黒い塊が残渣として残る。(燃焼させた炎の色から判断すると2000℃ ぐらいではなかろうか。) 不活性雰囲気下で燃焼させると炭素残留分が残る。

ベークライトは。溶融しないプラスチックなので150~180℃まで耐えられるとする考え方がある。鍋の蓋はこれの利用例である。

便利な調理器具の一つに電子レンジがある。

マイクロ波を吸収し発熱しやすいので電子レンジには使うことができない。
また、断熱性も高く、熱が伝わりにくいという特性がある。断熱板として使用可能である。

下記のような製品を加工して販売させていただきました。社内の連絡ミスによって起きた不具合が主たる原因です。あるお客様から下記のような苦情が来ました。

お客様:”布入りべーくの加工品を納品していただきましたが、5枚のうち1枚が他の4枚に比べると明らかに色が違う、いったいどうしたことか。”

私:”詳細が分からないので確認してからお返事したいと思います。布入りべーくであることに間違いがないのであれば、色に関しては不問にしていただきたい。ベークライトは生産された時点から刻々といろが変化するものです。色が変わっても性能の変化を確認できない。このように考えています。”

お客様:”しかしですね。同じ場所に使うのにこれだけ違うというのは如何かと思う。どのように発注すればよいのか。色を揃えてと指示をするのか。悩みます。”

私:”ここにある書類には最初4枚の注文がありましたとあります。本来は5枚注文をせねばならぬところを4枚しか依頼しませんでした。日を変えて1枚追加注文がありました。このように記載されています。現場としては4枚の加工が終了してから、追加注文として1枚を加工しました。”

お客様:”私どもとしては5枚お願いしました。”

私は5枚同時に発注されたことをこの時点では理解していなかった。

私:”ふたつ、話をさせていただきます。ひとつは、この問題を解決する方法。例えば再制作する。もうひとつは布べーくに関して理解していただく。再制作をするのを拒否するものではありません。”

お客様:”では。話してください。”

私:”昔、蒸気機関車が走っていたころを想像してください。蒸気を動力にして列車が走る。夜になると周りは真っ黒、電気がないので走ることはできませんでした。そんなこんなしているうちに、電気が発明されました。ちょうどこのころ、ベークライトが発明されました。電気を配線するには絶縁物が必要です。これにはベークライトが最適です。

お客様:”それで”

私:”ベークライトに長い歴史があり、この当時に作られたベークライトは今でも使用されています。従って経年変化によって強度が変化することは考えにくい。こんな話をしているより、メールで現品の写真を送っていただけませんか。私が見ればすぐわかります。お願いします。”

お客様:”5枚をベークライト板の加工品をjpegの画像にしてmailしました.見て連絡をください.”

私:”拝見しました。確かに色が異なりますね。5枚のうちの4枚は同時期に作成されたもの。1枚はこの4枚より5年以上前に作成されたベークライトです。確かにお客様が不信感を持たれるのは自然です。”

お客様:”先ほど、この現象を加速する方法があると言われました。ホームページにあるとのことですが、教えてください。”